【国際関係学部】模擬EU2024に国際関係学部生が参加しました!(後編:模擬EU本番の様子と体験などを紹介)

2024.11.13

模擬EU2024に参加した国際関係学部の学生6名が自身の体験を元に模擬EUを紹介するニュース記事の後編です。この記事では、オランダ、クロアチア、ルクセンブルクをそれぞれ担当した学生が、各国の代表として提案や交渉を行った当日の様子や成果、模擬EUへの参加を通しての学びを紹介します。模擬EUの概要や本番までの様子は前編をご覧ください!
                                                                                                 エストニア代表:国際関係学部3年次 杉 旺城
                                                                                                 オランダ代表:国際関係学部3年次 江口 遥奏
                                                                                              クロアチア代表:国際関係学部4年次 田村 和奏
                                                                                       ルクセンブルク代表:国際関係学部3年次 采女 和斗
模擬EU当日の会場の様子
ポーランド代表として発表する土生田さん
エストニア案を発表する杉さん

オランダ代表として

今回のMEUではオランダ代表として参加しました。「輸送部門の効率化」に関する議論では、効率的なルートを作成することで排気ガスの排出量を減らすことが可決されました。また、貨物運送における海運の割合が高い国はRORO船のような手段を用い、海運と陸運のモーダルシフトを行うことで、効率化を目指すこととなりました。オランダとしてもロッテルダム港という貿易が盛んな港があるため、海運と陸運のどちらの面からも環境負担を考えた対応をする必要があると感じました。
「大型車の脱燃料化」に関する議論では、現在利用されている車両を環境負担の低い燃料に移行するために全会一致を目指しました。オランダはすでに水素ハブを所有しており活発的に利用することが出来るが、一部の国は水素を製造するための費用や技術が足りないという課題がありました。しかしEU全体として近年の環境問題を深刻にとらえているため、水素への対応が難しい国には新たに価格変動が起こらないよう十分に配慮したe-fuel(合成燃料)やバイオ燃料を使い、各国がそれぞれの国の情勢に合った対応をすることで全会一致をすることが出来ました。
MEU当日は、その場で自国の立場を表明した後に各国と交渉をしていくため、事前に自国のことを理解し、相手国にはどのような課題があるのか、またその課題に対して自分たちができることはあるのかなど、交渉中も活発な議論を行うことが出来ました。
オランダに留学をしていた際、環境に配慮した活動が様々な場所で当たり前のように行われており、日本との違いに感心しました。しかし今回のMEUを通してオランダやEUの環境保護の活動がなぜこのように活発的なのか、どのような指標があり、達成させるのか、またその課題など深い部分まで実際の議論やEUのシステムを体験しながら知ることが出来ました。今回学んだことを活かして今後の EUの動向に注目するだけでなく、EUと関わりの深い日本の環境問題への取り組みも積極的に責任をもって考えていきたいです。
 

オランダの冒頭陳述(右が江口さん)
白熱する交渉の様子

クロアチア代表として

今回の模擬欧州連合(MEU)では、クロアチア代表として「運輸部門における脱炭素化」についての議論に参加しました。
まず各加盟国が自国の①気候変動対策における優先事項、②輸出部門の排出削減対策の成果、③欧州委員会(EC)による草案への意見を2分程度のステートメントとして発表するところから始まり、その後に分科会が開かれました。分科会では、中東欧諸国で足並みをそろえることが確認されました。
全体会合では主にe-fuel(合成燃料)の導入が話題となりました。クロアチアとしては、e-fuelの導入および燃料自体の高コストに対する懸念を示しました。また、EV移行期の一時的な低炭素化に資金を費やすのではなく、2050年までに全加盟国が確実にEVに移行できるような長期的な政策に資金を割り当てるべきだと主張しました。さらに、EC草案がe-fuel導入に偏重している点についても異議を唱え、強制的な導入ではなく柔軟性を求めました。
最終的に各加盟国は、「2050年までのEV普及期において、従来燃料と同一の価格を条件に、e-fuelやバイオ燃料を活用しつつ使用燃料の低炭素化・脱炭素化を推進する」という指令案に合意しました。
これまでの学部やゼミでの学びでは、主に自身の価値観に基づいて意見を述べる機会が多くありましたが、MEUでは担当国の立場で交渉を行う必要があり、自分の価値観とは異なる視点から考えることが求められました。そのため、各政策の根拠や今後の方向性を客観的に分析し、クロアチアの利益に基づいて発言を行うことが求められ、新しい視点を得る良い経験となりました。


発表する田村さん
クロアチアの提起発表のスライド

模擬EUの参加を通しての学び

EU(欧州連合)が実際にどのように意思決定を行なっているのか、この過程を当事者の目線で行えたことが一番の学びとなりました。普段の国際関係学部の講義(ヨーロッパ論、地域統合論など)で、EUの基本システムや各国の様々な考えがあることは理解できても、なぜそのような考えになるのかといった共感や理解の部分まで至るのは難しいと思います。西欧や東欧といった地域間の異なるバックグラウンドがある中、共通の枠組みの中で意思決定をするまでに、お互いの合意が必要不可欠です。気候変動というテーマでEUの全体益になることを求める一方、経済力や地理的な関係で自国益も確保したいという両面での折り合いを見つけ出し、27カ国すべての国が最後の指令案を可決させる過程は壮大です。私自身はルクセンブルクを担当しましたが、西欧と東欧の意見の割れ目を見つけて、互いの橋渡し国になるような役割を担えるよう努力しました。このような各国の思惑が飛び交う模擬EUは、まさに議会のリアルな緊張感と複雑さを体感できる貴重な機会でした。
模擬EUは、6月から始まったEUの概要, 政策動向を理解するための準備期間を経て、代表部の訪問、2回のリハーサルと計4ヶ月以上の長きにわたるイベントとなりました。とりわけ京都産業大学以外の全国の大学や多様な学部出身者と接点を持ち、交流できたことが私の中で思い出になりました。実際にヨーロッパを旅行して担当国に思い入れのある学生にも出会いました。27カ国で高いレベルの議論ができたのは、このような多様なバックグラウンドの仲間が集まっていたからだと思います 。模擬EUという貴重な機会をいただけたこと、とても感謝しています。
他大学生とペアで発表(右が采女さん)
他大学生とペアで発表(右が木本さん)

指令案の合意を終えた学生らは、記念館にて閉会式に出席しました。駐日欧州連合代表部副代表のトーマス・ニョッキ公使からは、「学生たちのエネルギーと熱意に感銘を受けており、将来、学生たちが日・EU関係の支持者となり、日本とEUをつなぐ大使となってくれることを期待している」(『奈良新聞』)とのお言葉をいただきました。また、模擬EU全体を通して最も優れた評価をされた学生4名には、優秀賞と今冬の欧州連合本部訪問(オランダ・ブリュッセル)の機会が渡されました。
閉会式での集合写真(駐日欧州連合代表部Xより Photo: Akio Chamoto)
 模擬EUは、国際関係学を学ぶ私たちにとって「グローバル人材」を目指す上でも非常に実践的な経験となりました。当日、会場に駆けつけて各国代表の冒頭発表から合意形成までを見守った国際関係学部の植原行洋先生からも、「具体的な政策課題について実際の意思決定過程を経験する模擬EUへの参加や他大学学生との協働は、グローバルな実践力を身につける貴重な機会となったと思う」との評価を頂きました。
当日会場に応援に駆けつけた植原教授と参加者6名で

■当日の様子は、以下の駐日欧州連合代表部のFacebookや新聞記事でもご覧いただけます。

・第2回模擬EU@奈良女子大学(2024年10月26日)
https://www.facebook.com/euinjapan/posts/977090121125668
・『奈良新聞』2024年10月28日 https://www.nara-np.co.jp/news/20241028231327.html
・『朝日新聞』2024年11月7日朝刊
■前編記事「模擬国連2024に国際関係学部生が参加しました(前編)」
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2024_lr/20241108_192_news.html 
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