インドネシア・国立バンドン工科大学と神山天文台の国際協力で新星爆発に関する研究成果
2017.04.06
左:設置した分光器(NEO-R1000)の取り付け作業中の様子(2015年3月21日)。新井研究員(左)とバンドン工科大学の Irham T. Andikaさん(右・当時4年生)が取り付け作業を行った。
中央:Bosscha天文台の敷地内に設置されている口径40cmの望遠鏡に、本学から提供した小型分光器を搭載した様子。小型分光器は天頂を向けた望遠鏡の下部に取り付けられている。今回の研究成果は、このシステムを用いて得られた。
右:小型分光器を使って観測するバンドン工科大学の学生さんたち(右: Robiatul Muztabaさん(論文の主著者)、左: Irfan Imaddudinさん)
2015年に京都産業大学とバンドン工科大学の間に締結された協定に基づき、神山天文台ではバンドン工科大学のBosscha天文台に小型の天体分光器を提供し、同装置はBosscha天文台における研究・教育活動に活用されてきました。研究面では、神山天文台の新井研究員を中心に、新星爆発(classical nova)の観測研究をBosscha天文台長のH. L. Malasan教授らとの協働によって進めています。Bosscha天文台では、神山天文台から観測できない南天の天体が観測可能、というメリットがあります。今回の研究成果は、V5668 Sgrと呼ばれる「いて座」に現れた新星爆発に関するもので、日本からは観測可能な期間が極めて限られていましたが、ほぼ赤道上に位置するBosscha天文台からは容易に観測可能だったのです。新井研究員らは、その利点を生かして、V5668 Sgrの継続的な観測を実施し、新星爆発後の変化を明らかにしました。今回の新星爆発では、大量の塵(ちり)が発生していることが分かっており、本研究の観測は、まさにその塵の大発生中に幾度か実施されています。新星爆発において塵が発生するメカニズムは未だ十分に理解されておらず、今回の観測結果がメカニズム解明にむけたヒントになると考えられます。
本研究の成果は、2017年1月に学術論文雑誌Journal of Physics: Conference Series, Volume 771, Number 1にオンライン掲載されました。
タイトル | "The spectral evolution of nebular phase from Nova V5668 Sgr" (新星V5668 Sgrにおける星雲期のスペクトル変化) |
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著者 | R. Muztaba, H. L. Malasan, and A. Arai, |
雑誌 | Journal of Physics: Conference Series, Volume 771, Number 1 |
また、京都産業大学からBosscha天文台に送られた小型分光器は、河北教授(神山天文台長)が産業界との協働の一環として天体機器開発メーカーに開発のアドバイスを行い、また、その性能評価を自ら行ったものです。当該装置は、一般のアマチュア天文家が持つ小型の望遠鏡でも利用が可能な「小型かつ安価な研究指向の分光器」として開発されたものであり、より多くの人々が本格的な「天体分光学」に親しむことができるようにとの河北台長の願いから生まれたものでもあります。 神山天文台と産業界との協働の好例です。
今回の成果は、神山天文台における「海外研究機関との国際連携」そして「産業界との産学連携」という二つの連携が生み出した成果とも言えるでしょう。今後も神山天文台では「むすんで、うみだす。」を目標に、新たな価値の創造につとめます。
※この研究の一部は、住友財団の基礎科学研究助成金(No.141404, 新井彰) の支援を得て行いました。
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