松吉が選んだゼミの研究テーマは、経営学に関わる数字をアンケートなどの社会学的手法で捉える「ソーシャルリサーチ」だ。年代、地域、社会関係、流行といったさまざまな情報から検証を行い、数字の本質を探りあてる。松吉のゼミでは、信頼性のあるデータを獲得するためのアンケートを構築し、700人を超える学生を対象にトライ&エラーを繰り返している。
「なんだかお堅いイメージの分野ですよね(笑)。でも、地道な作業を繰り返しているうちに、調査対象の本質が少しずつ見えてくる感覚はとても面白いです。商品が売れる背景にある文化や人の考えなどが分かると、経営学の数字が途端に身近に感じます。私が調査したのは、男性のメークについて。従来の調査では、ファッションに興味を持つ人の多数は否定的だ、という結論が出ていました。しかし私が実施したアンケートでは、男性のメークはむしろファッションに興味のある人たちが支持しているという数字が得られたんです。分析をすると、近年の男性アイドルの台頭や海外トレンドの流入が影響していることがわかりました」。
松吉はソーシャルリサーチの過程を、宝石の鑑別のようだと話す。原石に光をあて、カットをして、隠された年代を調べることで、そのものが持つ本当の価値を解き明かしていく。背景に隠れている本質を知ると、数字への理解が深くなるのだ。
「経営学の数字は、自分で買ったことのある商品の売り上げなど、身近な社会をテーマにすることが多いです。社会の仕組みや流れを自分事として捉えて、考えを深められるのが、一番の魅力だと思います」。
※掲載内容は取材当時のものです。