京都産業大学には、誰でも気軽にものづくりが体験できる「ファブスペース」がある。3Dプリンターやレーザーカッターなど多くの最新デジタル工作機器を自由に使うことができ、学生たちは「こんなにぜいたくな環境は他にない」と口をそろえる。
オープンキャンパスのアルバイトとして集まった辻永、高木、小山の3名はこのファブスペースでマスクバンド「noitami」を開発した。
「オープンキャンパスに来た高校生たちに、実際にものづくりを体験してもらうための題材として提案したのがマスクバンド。短時間で作りやすく、喜んでもらえるものを3人で考えました」
コロナ禍において必需品となったマスク。マスクのひもで耳が痛くならないようつけ心地を重視しながら、見た目のデザインにもこだわった。「noitami」は「No 痛み」とフランス語の「ami(友人)」を掛け合わせたネーミングだ。
「最初はペットボトルにも使われるような硬めの素材でしたが、つけ心地を追求するうちにもっと柔らかい素材で作れないかな、と。さらにその素材ならハサミで切って長さを調整できることにも気付きました」
「思いたったらすぐ形にできる」ことがファブスペースのメリットだと小山は言う。「作ってみた」「使ってみた」「良くないね」「じゃあここを変えてみよう」というサイクルが早い、つまり高速の試行錯誤が可能になる。実際、彼らが製作にかけた時間はたったの2日間だ。
「実物をメンバー全員で共有すると改善点やアイデアが出やすくなります。ものづくりにおいて“取りあえず作ってみる”はかなり大事。それをかなえてくれるのがファブスペースです」
クリエイティブな発想は、手を動かすからこそ生まれるもの。ファブスペースでは今日も学生たちが試行錯誤を繰り返しながら、ものづくりの姿勢を学んでいる。
※掲載内容は取材当時のものです。