雄大な阿蘇山の麓に広がるのどかな町、熊本県・大津町が月尾の故郷だ。子どもの頃から歴史が好き。中学の修学旅行で訪れた京都の街並みを見て、「大学は京都で」と心に決めた。現在、月尾が学ぶ文化学部・京都文化学科は、神社仏閣などを訪れて行うフィールドワークや、祇園祭をはじめとする伝統行事への参画など、実践的な学びが特長だ。夜の平安神宮でかがり火をたいて行われる美しい薪能、学部の授業のやりとりが縁で始めた上賀茂神社の巫女のアルバイト。想像していた以上の出来事が次々と叶う中で、月尾は京都の暮らしがさまざまな行事や伝統文化と結び付くことを知る。
「例えば上賀茂神社の“葵祭”も地域に住む人たちの協力があって成り立っています。文化は単独で存在するわけではなく、行事、建物、文化財、人の全てがつながっているんです」。
例えばゼミのフィールドワークで訪れた妙満寺で、月尾が目にした数百年前の掛け軸には、一目で分かる筆圧の強さや紙の種類など、本物にしかない“何か”があった。それは掛け軸が描かれた過去と、現代をつなげるような“何か”だ。
こうした本物を手に取る機会を得るたびに、月尾は「自分自身が歴史の流れの一つになるような」感覚になるという。目で見て、耳を澄まして、問いかける。本物を通して、人や地域を理解する。はるか昔の歴史そのものと対話する。
月尾にとって京都での学びとは、つながりに思いをはせること。彼女はいま世界でここでしか得られない本物の力を磨いている。
※掲載内容は取材当時のものです。