いま小黒が所属するゼミのテーマは「地方自治体の財政問題についての研究」だ。
そこでは自治体の財政課題を調査したり、地方活性化と財源の関わりについて学んでいる。中でも小黒にとって印象的だったのは、日本三景のひとつ「天橋立」で知られる京都府北部の街・宮津市で行ったフィールドワークだった。
人口流出のほか、現状の課題を知るためにゼミの仲間と街を見て回ったとき、宮津の人たちの温かな対応に感激し、さらには有名な天橋立以外にも、若者の興味を惹きそうなスポットがたくさんあることにも気づいた。これまで集めた資料や公開データなどでは掴めなかった、宮津市の新たな魅力を実感できたことが収穫だった。
経済学とはある種の「視野の学び」なのだと小黒は言う。政策、人の流れ、人口の増減などあらゆるデータを広げた上で、最終的に金銭のやり取りなどの視点も加味しながら解決策を探っていく。広い視野と経済活動という生活の営みを起点に考えるからこそ、リアルで実現可能性の高いプランを提案できるのが経済学の学びなのだ。
「例えば宮津市のまだ有名になっていないスポットで行う「フードフェス」が実現できたら、売上金でコストを抑えながら知られざる宮津の名所を知ってもらえたり、観光客と地元の人との関わりを増やせるかもしれないと考えています」と小黒は言う。
目には見えない地元への愛着や、人の優しさも感じられたからこそ、イベントやお金など目に見える形に変えるアイデアも生まれてくる。
経済学という広い「視野」に、フィールドワークで得た「実感」を組み合わせることで、より役立てる提案やプロジェクトができる。そんなノウハウを、小黒はいま実践の中で学んでいるところだ。
※掲載内容は取材当時のものです。