オーストラリアへの長期留学、フィリピンへ短期留学、併せて英語とフランス語という二つの教員免許の取得と、慌ただしく学び続けた学生生活だった。
「ただ実際に海外へ出て『言語を学ぶ意欲』を高めながら、教職課程の学びの中で『言語の教え方』を意識することは、互いに相乗効果を発揮する学び方だったのではと感じています」
そんな風に鬼澤は自身の学生生活を振り返る。中でもオーストラリアへの留学で、現地の小学校の授業を見ることができたのは彼女にとって大きな転換点になった。
日本人が国語を学ぶように、ネイティブの人がどのように母語を学ぶのか。そこには日本のように漢字(スペル)や指示代名詞の意図を考えるような「国語の授業」ではなく、先生や生徒による発表が中心の「おしゃべりを楽しむ」ような授業があった。
「つまり言葉のテックニックやノウハウではなく、「言葉を操れると楽しい」という生徒の興味関心を刺激することにポイントが置かれていたのです」。
言語を学ぶことは自転車の乗り方を覚えることにも似ていると鬼澤は言う。言語を使いこなせたらどんな楽しいことがあるのか。その先にどんな景色が広がっているか。目標やメリットが明確になれば、あとは一人でも練習がしたくなるものだ。
「なにより自転車の乗り方を覚えるのに、じっと説明書だけ読んでいる人はいません」。実際にサドルにまたがって、ペダルを漕いで時々足を地面に付けながら感覚をつかんでいくのだ。
外国語学部には単に言語を学ぶだけでなく、留学や教職あるいは海外の文化や芸術、歴史に関わる様々な学びの場がある。言語を学びたくなる、自転車に乗ってみたくなる理由がそこかしこにある環境だ。そして言語を操れるようになれば、できることや見ることができる景色は大きく広がる。
「私がこの学部で学んだことは『話す・聞く・書く・読む』に加えて『動く』こと。ここでは自身のやりたいこと、自身の好奇心を刺激し続けられる人ほど成長の上昇気流に乗れる気がします」。
※掲載内容は取材当時のものです。