京都産業大学が誇る14号館の「ファブスペース」は、3Dプリンタやレーザーカッターなど最新のデジタル工作機器が揃い、あらゆるモノづくりが可能な場所だ。
高木が学習支援グッズ「コノジ」を開発したのは、このファブスペースが主催するプロジェクトで「何か高校生向けのお土産を作れないか」と考えたのがきっかけだった。
辞書や参考書などの分厚い本を開いたまま固定できるブックオープナーとして、また赤い文字が消えて見える赤シートや、重要な個所に波線を引ける定規としても使えるなど、コノジはシンプルな形でありながら様々な機能を備えたグッズである。
「おかげさまで好評を得てメディアからの取材を受けたり、京都産業大学のキャンパスグッズとしてオンラインのショップで販売していただけるまでになりました」。
ファブスペースには様々な最新機器が揃っていることもあり「なんでもつくれる」点がよく強調されるが、高木はさらに一歩踏み込み「何度も失敗できる」ことをメリットとして挙げる。
「例えばコノジは、高校生が使いやすいサイズ感を探し出すため10回、20回と何度も試作品をつくって比較しました」。
かつては熟練の職人しか手を出せない鋳型をつくるところから始め、何週間もかけて試作品を完成させていたようなモノづくりの世界だが、今ではものの1時間ほどで試作品をつくることができる。
「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない。」という言葉通り、高速でプロダクトを生み出す様子は「時間を飛び越える」ようなある種の魔法のようなものだ。「でもそれによって可能になったのは『超高速の試行錯誤』というある種の泥臭い作業なんです」。
スマートなアプローチと泥臭いスピリット。高木たちのような未来のエンジニアに必要なノウハウと姿勢を学ぶ場として成長を後押ししてくれる場こそ、京都産業大学が誇るファブスペースなのである。
※掲載内容は取材当時のものです。