起業を目指す仲間と、起業に挑む。
2024.04.01
直線の軌跡を描く裏回し蹴り。一瞬で対戦相手の頭部を捉える一撃が、試合を決めた。
2019年11〜12月。スペインで開催された空手1プレミアリーグで、田畑は世界3位の成績を残す。やっと出した結果だった。
高校ではユースオリンピック準優勝、アジア2連覇と華々しい成績。しかしシニアクラスに入ってからは伸び悩む時期が続いた。高校時代は日本代表として世界を回り、1年に2カ月しか日本にいなかったこともある。しかし大学では毎日の授業と練習で、生活リズムは一変。
こうした日々と向き合うことから、田畑の大学生活は始まった。
「とにかく効率を上げるやり方を考えました。例えば練習と勉強の時間を区切ることで、両方の密度を高めていく。一方で『今日は勉強したな』という達成感は練習に持ち込んで、さらにやる気を出していくとか。考え方を工夫しました」。
その思考の背景には、大学で彼女が学ぶ経営学の「マネジメント」のエッセンスが見え隠れする。「世界3位」の称号は、まさに彼女が学びと練習の在り方を模索し続けた成果だった。
田畑は今、将来世界で活躍する若手育成の次世代ターゲット選手でもある。
頂点に近づく闘志を燃やしながら、将来は今の学びを生かした指導者の道も視野にある。「努力するだけ、選択肢が広がっていく」。そう笑って、シビアに己を磨く彼女の蹴りは、より高く鋭く。引き込まれるような美しさが備わっていた。
※掲載内容は取材当時のものです。