054
神山天文台宇宙の学び

いつか星に
手が届くまで

  • 理学部 4年次
    坂本 りおさん

昔から星が好きだった。オープンキャンパスで神山天文台に出合い、ここで学びたいと受験を決めた。だが、周囲の大反対に遭う。元々、得意なのは文系科目。数学と物理は飛び抜けて苦手だった。星が好きだという理由だけでは、誰も納得はしてくれなかった。「でも私それ以外にやりたいことがなくて」。受験期のラストスパートで精一杯の力を尽くし、なんとか合格はできたものの、入学後は毎日がほぼ数学と物理の授業という日々。課題を一問解くのに4時間かかったり、周りが当たり前にできることができない悔しさを何度となく味わった。
そして、坂本は今、神山天文台で「新星爆発」の研究に取り組んでいる。白色矮星(はくしょくわいせい)という新星が爆発すると、他の天体ではありえない成分が検出される。神山天文台は、その観測を2013年に世界で初めて成功。以来、継続して観測・研究に取り組んでいる重要テーマの一つである。
坂本の研究テーマは2020年8月、カシオペア座近くで起きた新星爆発だ。ハワイに設置されたNASAの望遠鏡のデータを取り寄せ、爆発時にどんな原子・分子が検出されたかを調べている。「宇宙の研究の魅力は“謎が多い”ことに尽きます。星をつくる成分や質量を含め、まだ解明されていないことが多すぎる。研究の道筋さえ間違っていなければ、何をやっても新しい発見にぶつかります。しかも、それは世界中で私以外に誰も知らないことだったりもする。だから一度ハマると抜け出せないんです」。
複雑な数式やデータで埋まったノートをパラパラと見直す姿からは、数学・物理が苦手だったという頃の彼女は想像もできない。得意なことより、好きなことを——。何度も挫折して、壁にぶつかって、そのたびに「やめておけばよかった」と後悔をして。でもしばらくして「好きで選んだことやし」と前を向くたびに成長できた。そうやって「いつか星に手が届くまで」学び続けた道のりこそが、彼女にとって何よりも誇らしいものなのだろう。
もし今、高校時代に戻れたら違う道に行く? そう尋ねると坂本は首を横に振った。「やっぱり今の道を選ぶと思います」。

※掲載内容は取材当時のものです。

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