053
フィールドワーク京都の街

故郷を笑顔に
するために

  • 文化学部 1年次
    坂本 美夢さん

宮城県・東松島市。2011年3月11日に発生した東日本大震災で最も被害が大きかった地区の一つだ。坂本は当時、小学3年生だった。
自宅は全壊。小学校で1カ月の避難生活。その後、仮設住宅での暮らしが始まったのだが、その間、坂本にとって何よりも気掛かりなことがあった。「周りの大人たちに元気がない」のだ。街並みや身の回りのものを失うことよりも、まだ小さかった彼女にとっては、笑顔や気力を奪われた大人たちを見る方が不安になった。何か自分にできることはないか。地域を盛り上げるにはどうすればいいか。失った街の文化や笑顔を取り戻すには——。その答えを探し続けて、彼女は今、京都産業大学の文化学部で学んでいる。
「本物に触れる学び」に興味があった。文化学部京都文化学科では1年次から京都の街でのフィールドワークを積極的に行う。二条城や壬生寺、祇園の街や美術館、どこへ行っても普通の観光では見ることがかなわない展示や専門的な解説を受けられる。文化とは「つながり」の学びなのだと坂本は言う。例えば建物一つにも建築時の時代の思想や技術がどこかに映し出される。さらにその周囲を回ってみれば「なぜその場所に建てられたのか?」その理由さえ見えることもある。本物には、そんな「つながり」を意識させる力があった。そして小学3年生の自分があの日に失ったのは、あの街に息づく文化であり「つながり」ではなかったか。坂本は当時を振り返る。日々の暮らしの中に、自分や家族が生きた証があるからこそ、人は心から笑えるのかもしれないと。それでも、と彼女は言う。この街を見ていると勇気が湧くのだと。
「京都は古い文化を大事にする一方で、新しい文化も常に取り入れています。新しいものの取り入れ方にもヒントがある。そんなことに気付いたり、教えてもらうたびにハッとします」。賀茂川のほとりで東の大文字山を見上げる坂本に、これからの目標について聞いてみた。まだ答えが見つからないんです、とうつむきながら、彼女が口にした言葉には、ある種の決意がこもっていた。「私たちの世代にしかできない復興の形を実現します」。

※掲載内容は取材当時のものです。

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