経済学部大西ゼミでは、京都府井手町と地域連携協定をむすび、地域の活性化のための取り組みを行っている。3月11日には学びと地域の交流拠点として、空き家を改修し“むすび家ide”をオープン。京都産業大学生と地域住民が自由に集い交流を深める場として活用する。「井手町のために自分たちができることをしたい」という学生の想いと「町の良さを発信し盛り上げたい」という地域の願いをむすび、新たな交流と絆をうみだしていく。
むすび家ideができるまでの流れをお聞かせください。
井戸さん:この“むすび家ide”は地域の交流拠点として、2016年の10月頃から町の空き家の改修をスタートさせました。みんなが集まれる場所にしたいという想いで始めた取り組みでしたが、思っていた以上に空き家が荒れていて「これが本当にきれいになるのか」と不安になりました。床も荒れ放題で、裸足では危ないので靴を履いたまま上がって、まずは畳を剥すところから始めました。ゼミの先輩たちも応援に駆けつけてくださったので、障子を貼るだとか床を拭くといった自分たちの手でできる仕事はすべて行いました。
橋本くん:改修後の間取りなどは町役場の方やデザイナーの方も交えてワークショップを繰り返し、綿密にプランを詰めていきました。歴史を感じられる家なのでその良さを存分に生かしたいと思い、備え付けの飾り棚などはあえて壊さずに残すなど工夫をしました。
井戸さん:置いてある家具なども、使えるものは再利用しようと決め、附属高校から不要になった椅子をいただいてきたりして揃えました。学校の椅子は誰もが記憶にあるものなので、懐かしさや温かみが感じられて良かったと思います。
橋本くん:ほかにも五右衛門風呂があったり、旧型のテレビがあったり、私たち学生にとっては新鮮ですが、訪れる多くの方が懐かしいと思えるものがたくさんあるんですよ。
小川会長:この家は築100年を超え、私も幼少期から何度も通っていた思い出の家です。1928年の大きな水害の時にも、流されず残った由緒ある家。当時この家のおじいさんには何度も叱られましたが、それも良い思い出です。何十年かぶりに家に上がって、こんなにきれいに立派になったことに感激しました。ここまでの状態にするにはかなりの手間と労力がかかったと思いますが、学生さんたちは本当によくやってくれたと思います。町をあげて空き家利用を進めていますが、実際にここまでできるという実績を作って見せてくれたことがとてもありがたいですね。一町民として嬉しい限りです。
“むすび家ide”をどう使っていきたいですか?
井戸さん:今回の井手町さくらまつり(4月開催)でも、休憩所として無料開放し、温かいお茶やポップコーンを振舞いました。まだオープンから日も浅く、メイン通りから一本外れていることもあって訪れる方も少数でしたが、足を運んでいただいた方には「懐かしい感じがする」「立派な家だね」と好評でした。今後はもっと認知度を上げ、たくさんの方に訪れてもらえる場所にしていきたいと思っています。まずは地域の方にたくさん使っていただいて、交流や話し合いの会場にしたり、町内の飲み会を開いてもらってもいいと思っています。私たち学生もできるだけむすび家ideにいるようにして、「ここに来れば誰かに会える」という場所になればと考えています。
橋本くん:近くに小学校があるので、学校帰りに遊びに来てもらえたらと思っています。寺子屋のように、勉強を教えたり一緒に遊んだり、イベントを企画したりして盛り上げたいです。私たち大西ゼミだけが使うのではなく、大学全体で利用して、子どももお年寄りも巻き込んで交流できる場所にしたいですね。小川会長が幼い頃に通ったように、今の子どもたちにとっても思い出深い家になったらいいなと思います。
小川会長:小学生の保護者の方にこの場所を覚えてもらうのも大切ですね。七夕や月見、昔遊びやお茶会など、小さくてもいいので定期的にイベントを行っていくことで認知を拡大できれば、保護者の方も安心して子どもをむすび家ideに送り出すことができます。そのためには私たちまちづくり協議会も協力を惜しみません。“井手町まちづくりセンター椿坂”でこれまでも学生さんたちと一緒に活動してきましたが、これからは学生さんが“むすび家ide”、私たちが“椿坂”を拠点とし、密に連携を取りながら協力して町おこしに取り組みたいと思っています。
その他にも井手町で行っている取り組みについて教えてください。
井戸さん:私たち大西ゼミによる井手町での活動は、2013年から始まり4年目になります。11月に行ったイルミネーションイベント“井手みねーしょん”では、これまでの伝統を受け継ぎながらさらに付加価値を付けるために企画を練りました。これまでは紙パックで燈篭を作っていましたが、今年は新たに放置竹林の竹を資材としてを利用した竹燈篭を取り入れました。町の学校で行っていた外国人観光客向けのワークショップに参加し、竹燈篭の作り方を学びました。また、川沿いのイルミネーションだけでなく、メイン会場を設けることで人が集まりやすくなり、イベント自体も大いに盛り上げることができました。町の方々からも大変好評をいただき、とても嬉しかったです。
橋本さん:今回の評判が良かっただけに、次回担当する私たちの代はなかなかハードルが高いですね。この良さを受け継ぎながら、さらにレベルアップさせたいとゼミのメンバー一同やる気に燃えています。こういった想いが、井手町をさらに良くしていきたいという熱意にもつながっていると思います。
井手町での活動を通して成長を感じたポイントはありますか?
橋本さん:私はゼミに入ってまだ半年ほどしか活動していないのですが、フィールドワークがメインなので、役場や地域の方と協力して作り上げるということを体験してきて、すでに自らコミュニケーションを取っていく力が身に付いてきたと感じています。学生だけではできないことがほとんどなので、協力を依頼したり、許可を申請したり、教室の中だけでは体験できないことを経験できるのが一番成長できるポイントだと思います。
井戸さん:私は大学生活の中で一番頑張ってきたことがこの活動。初めから地域活性化に興味があったわけではなかったのですが、先輩たちの活動の様子を見たときに、本当にキラキラ輝いて見えたんです。大変だとは聞いていましたが、楽しそうな先輩たちに惹かれてこのゼミに入りました。実際に活動してきて、いかに私たちの思いを役場の方に伝えるか、どこまで本気で町のために考えられるかなど、葛藤することもありましたが、それらすべてがかけがえのない経験になったと思います。頑張れば頑張るほど、地域貢献の魅力に取りつかれましたね。みんなで同じ目標に向かって全力で取り組み、何度もぶつかりながらやり遂げたときの達成感はとても大きかったです。
これからの目標を教えてください。
井戸さん:井手町を活性化するためには、まずは内から盛り上げていく必要があると思っています。今回むすび家ideという活動拠点もできましたし、まずは町の人たちが集まる交流の場として認知を広げていきたいですね。町の中から元気にすることで、外からも多くの交流人口を呼び込めるようになるのではと考えています。子どもからお年寄りまで、町民みんなの世代を超えた共通の思い出が生まれる場所になったらいいなと思います。卒業してからもお手伝いに来るつもりですよ。
小川会長:むすび家ideのオープンを皮切りに、宿泊施設を整備していくとか、これからはいろんなことが考えられると思います。町の周辺もあわせて整備していきながら、若い方とも世代間交流を深められたら嬉しいですね。持ちつ持たれつの関係ですので、学生さんの柔軟な発想でたくさん意見を出してもらえれば、私たちも一緒に発信していきます。昔ながらの近所付き合いのように、町全体で絆を強めていきたいですね。
橋本くん:今後は私の代が中心となるので、名前の通り「むすんでうみだす拠点」になるよう、さまざまなイベントを考えているところです。京都産業大学生と井手町民が掛け合わさって、そのかかわりの中からさまざまなものをうみだしていきたいです。
※掲載内容は取材当時のものです。