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解 説 これは一般に”葵祭”の名で知られる賀茂祭の行列を中心に描いた絵詞(えことば)であり、『賀茂祭絵詞』と題する写本が多い。 奥書と詞書によれば、(1)原本は鎌倉後期の文永11年(1274)4月15日に行われた賀茂祭の行列を、亀山上皇の催された絵合(えあわせ)の時、藤原為信が絵に描き、藤原定成が詞を描いて、藤原経業より差し上げたものである。 ついで(2)元徳2年(1330)、それを絵所預(あずかり)の高階(たかしな)隆兼と入道(源)季邦が書写した。さらに(3)元禄7年(1694)、それを高階定信と沙門旦生が複数転写した。その1本がこの『賀茂祭草子』にほかならない。 元禄7年には、約200年中断していた賀茂祭の行列が再興された。この写本(3)は、その再興に役立てるため、親本(2)を忠実に模写したものとみられる。同系統の再写本が、國學院大學や神宮文庫などにある。 内容は、詞【前】- 絵【イ】- 詞【中】- 絵【ロ】- 詞【後】― 絵【ハ】から成る。詞書の【前】は賀茂蔡の来歴と文永11年の祭の意義など、ついで【中】は祭行列の見物者や検非違使列の様子など、さらに【後】は近衛使の餝車、弘長の禁制、斎王在任時代との比較などを記す。これはどの写本も変わりない。 一方、絵の【イ】は見物者の牛車・騎馬など、ついで【ロ】は見物の庶民、行列の検非違使主従など、さらに【ハ】は華美な餝車、騎馬の楽人、騎馬の近衛使と従者、騎馬の陪従、女使(もと斎王)の牛車と女官などを描く。しかし写本は、絵が原本に忠実なA系統本(この『賀茂祭草子』など)と、一部分を近世風に修正したB系統本(本学所蔵の明和書写『賀茂祭絵巻』など)とに分かれる。 このA系統本は、鎌倉時代の賀茂祭行列を描いた現存唯一の絵巻である。これを平安末期の『年中行事絵巻』賀茂祭路頭儀や室町時代・江戸時代・明治時代の絵巻と対比すれば、行列・装束などの変化を辿ることができる。またこのABには他の絵巻にない詞書があり、それによって絵の意味(今回の勅使四条隆良が得意な舞楽の風流を施していることなど)を知ることもできる。
(京都産業大学法学部 所 功)
〔参考〕佐多芳彦「『賀茂祭絵詞』とその周辺」(本学日本文化研究所紀要第14号 平成21年12月)など。
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