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新星における分子生成〜ダスト生成
新星におけるC2分子の世界初検出!CN分子検出は史上2例目!
新星爆発によって放出されたガス中で、ダストが急激に生成されることがあります。このようなダスト生成新星(dust-forming novae)は、新星全体の約2割を占めると考えられています。しかし、どのようにして急激なダスト生成が生じるのか、十分に理解されていません。しかも、このようなダスト生成は、新星爆発が生じてから数十日〜100日程度の間に急激に起こることが多く、宇宙におけるダスト生成プロセスを明らかにする上で、重要なターゲットとなっています。こうしたダスト生成の前段階として、電離したガスが中性原子となり、そして簡単な分子が形成されると考えられています。しかしこれまで、新星爆発において分子が観測された例は極めて稀です。
図1:新星爆発で分子、そしてダストが作られて宇宙にまき散らされ、いずれ太陽系のような惑星系の材料にもなったと考えられています。
2012年、神山天文台では、世界で初めて新星におけるC2分子生成の現場を捉えることに成功しました。また、歴史上2例目となるCN分子の検出にも成功しています。この世界初の発見を成し遂げたのは、本学大学院理学研究科(物理学専攻・博士前期課程2年生:当時)の長島雅佳さんと梶川智代さんです。二人は、2012年3月に「へびつかい座」に出現した新星V2676 Oph(3月25.8日世界時に、アマチュア天文観測家の西村さんによって新星爆発が発見されました)を、新星が発見された直後から継続的に分光観測しました。研究の結果、これらの分子は、わずか数日間しか新星に存在していなかったことが分かりました。一方、80年前の新星DQ HerではCN分子は発見されていますが、C2分子は見つかっていません。今回観測したV2676 Ophという新星は、炭素が豊富な新星だった可能性があります。
また、過去の他の新星においても同様な分子が生成されていたにもかかわらず、存在する期間が短いために観測から洩れていた可能性が示唆されます。今回の発見は、新星研究における頻繁な連続観測の重要性を再認識させるものとなりました。新星を継続的に分光観測している研究機関・研究者が非常に少ない状況の中、今回の発見は、継続観測の重要性に着目した長島さんと梶川さんの快挙と言えます。また、この発見は、神山天文台において学生が主体となって開発した低分散分光器「LOSA/F2」を用いた研究成果です。(同装置を用いた過去の研究成果については、神山天文台の研究成果[リンク]のページをご参照ください)
新星爆発におけるダスト生成プロセス解明に向けて、神山天文台が世界のトップを走っています。
掲載論文
“The Transient Molecular Envelope in the Outflow of the Nova V2676 Oph during Its Early Phase”, Nagashima et al. (2014), Astrophysical Journal Letters, 780, L26.
図2:天体からの光を色ごとに分けたものをスペクトルと呼びます(上図は青色〜赤色に対応する波長450nm - 760 nmまでの範囲)。最上段のスペクトルが一般的な新星のスペクトル、中段が今回の発見となった新星V2676 OphのC2分子発見時のスペクトルです。また、下段のスペクトルは炭素が豊富な星として知られている「炭素星」という種類の天体のひとつ、TX Psc(うお座TX星)という恒星のスペクトルです。両者が非常に良く似ていることが分かります。スペクトル中の暗い影(吸収)は様々な元素によるものですが、図中に記したC2分子が新星において発見されたのは世界初となります。
図3:国際会議の会場にて、発表者近影
研究を主導した本学理学研究科物理学専攻の長島さん(中央)と梶川さん(右)、そして共同研究者の新井(左、神山天文台研究員)。2013年にイタリアで開催された国際会議の会場にて河北(神山天文台長)が撮影。