総合生命科学部 バイオフォーラム2013 開催報告(2013.12.25)
12月25日15号館15102セミナー室において、総合生命科学部バイオフォーラムが開催された。
独立行政法人理化学研究所 放射光科学研究センター 生命系放射光利用システム開発ユニット 専任研究員 吾郷 日出夫 氏が「新たな超高輝度光源が拓く膜タンパク質結晶構造解析のフロンティア」と題し講演した。
講演内容
タンパク質は、生体内という温和な環境で、正確かつ高い効率で、ありとあらゆる生命現象を駆動する極めて優れた分子機械であると言っても過言ではなく、非共有結合のダイナミックな組換えを伴う構造変化として発揮されるタンパク質の分子機能を、タンパク質の立体構造(多くは静的な構造情報であるけれども)として垣間見、そこから学び、さらに利用出来るようになることは、我々の知的好奇心を満足するだけでなく、産業利用を通して生活の質をたかめる波及効果も期待される。それ故、一般的に解析が難しいと言われる膜タンパク質などの精密な構造決定に向けて、非常に多くの努力が払われている。
タンパク質を含む生体高分子の主要な構造決定手段であるX線結晶構造解析は、X線光源の高輝度化と共に発展し、最近では、数十ミクロンの微小結晶でさえ構造解析の対象とするビームラインがSPring-8 を始めとするリング型放射光施設で整備され、創薬上の重要なターゲットであるGタンパク質共役受容体を含め、解析可能な膜タンパク質の幅の拡大に寄与している。また、昨年3月から大強度フェムト秒X線パルス光を発生するX線自由電子レーザ施設SACLAの供用が始まり、数ミクロンサイズの超微小結晶の構造解析や放射線損傷の無い構造解析などへの応用が期待されている。
最近の放射光X線結晶構造解析技術について、講演者らによる喘息症状に関わる脂質メディエータ産生膜タンパク質ロイコトリエンC4合成酵素や呼吸鎖の膜タンパク質チトクロム酸化酵素への応用事例を交え紹介する。
質疑応答について
X線自由電子レーザ施設SACLAでの、大きな結晶を用いての、結晶を並進させながらの測定について具体的に質問があった。ラジカルによる結晶損傷を回避する方法について議論された。また、今後のX線自由電子レーザ施設SACLAの膜タンパクへの応用についても、熱心な質疑応答があった。難しい内容であったが、講演者の熱意のこもった説明で、良かったとの感想を頂いた。