総合生命科学部 第11〜13回バイオフォーラム開催報告
1月中旬に第11回〜第13回バイオフォーラムを一挙開催しました(詳細は下記参照)。
バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、開催しています。
本年度は、第13回をもって全てのバイオフォーラムを盛況のうちに終了することができ、来年度の開催も予定しています。開催準備が整いましたら改めてWeb上で情報公開をしますので、ぜひご参加いただければ幸いです。
第11回
1月7日(金)開催
演題
「重金属集積植物の機構解明と応用」
講師
滋賀県立大学 環境科学部生物資源管理学科 原田 英美子 准教授
要旨
重金属集積植物は、高濃度の重金属を地上部に蓄積する特殊な植物である。このような植物が体内でどのようにして重金属を集積・解毒しているかは興味が持たれ、様々な手法で研究が進められている。シロイヌナズナの近縁種であるArabidopsis halleri を材料とした、遺伝子の発現プロファイリングから重金属集積・耐性に関与する遺伝子群の同定をおこない、ニコチアナミン合成酵素などの候補遺伝子が得られた。また、ヤナギにおける重金属集積の生体内での分布について、放射光蛍光X線分析を用いた解析をおこなった。ヤナギでは特に葉の鋸歯先端に重金属が蓄積されていることが明らかになった。最後に、重金属汚染土壌を植物を用いて浄化する「ファイトレメディエーション」や、レアメタルなどの有用な重金属を植物を用いて濃縮、回収する「ファイトマイニング」への利用についてその可能性や方向性を解説した。
第12回
1月12日(水)開催
講師
京都府立医科大学大学院医学研究科 免疫・微生物学 松田 修 教授
演題
「サイトカインによるin vivo免疫応答制御」
要旨
免疫系は、高度に特殊化した細胞群がさまざまなシグナルを交換しつつ、複雑精緻で生体防御と恒常性のネットワークとして機能するスーパーシステムであり、感染、腫瘍、アレルギー、自己免疫、移植片拒絶等の病態にも深く関与する。
本講演では、とくに生体内免疫応答制御に重要な役割をしているサイトカインであるIL-21のTh1、Th2細胞を介したアレルギー性鼻炎モデルに対するアレルギー症状改善のための分子レベルでの抑制機構とIL-27のNK細胞、B細胞を介した腫瘍に対する抗腫瘍メカニズムおよび新しい免疫治療への応用について紹介した。
第13回
1月14日(金)開催
講師
大阪大学医学系研究科 細胞生物学講座 原田 彰宏 教授
演題
「モデルマウスを用いた、細胞の極性の形成維持を司る遺伝子の機能解析」
要旨
神経細胞や腸の上皮細胞などには方向性(極性)があり、それがこれらの細胞 の機能(刺激伝達、分泌、吸収など)に必須であります。その極性の形成維持に細胞内の方向性を持った輸送(極性輸送)が重要とされており、極性輸送を担う遺伝子が 十種類前後知られています。
今回は、Rab8、Syntaxin3、SNAP23などの遺伝子の欠損マウスを用いて、これらの遺伝子欠損マウスでは神経の発生・増殖の異常が起きることや、培養細胞の実験ではわからなかった遺伝子の本当の機能がわかったことなどを紹介しました。