総合生命科学部 第9・10回バイオフォーラム開催報告

 平成22年12月17日(金)、12月21日(火)に本学15号館15102セミナー室にて、第9回および第10回バイオフォーラムを開催しました(詳細は下記参照)。

 バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、開催しており、今回も盛況のうちに閉会することができました。

 なお、1月には全3回のバイオフォーラム開催を予定しています。こちらの方もふるってご参加いただければ幸いです。

第9回

講師

大阪大学 大学院医学系研究科循環器内科学分子心血管医学 高島 成二 先生

演題

AMPKによる細胞極性形成の分子機構

要旨

 AMPKはCLIP-170のリン酸化を介して微小管伸長スピードおよび細胞遊走を調整する。AMPKはATPの低下を感知して活性化されるリン酸化酵素である。AMPKは低酸素をはじめとするさまざまなエネルギー代謝の異常により活性化され生体でのストレス応答に深く関与している。

 これらの過程の中で、AMPKの活性化は細胞極性の形成にも重要であることが知られていたがその分子メカニズムは不明であった。本講演ではAMPKの基質であるCLIP-170を心臓組織から新たに精製同定し、AMPKの細胞極性形成における役割について明らかにしたのでその経緯を概説した。

 AMPKによるCLIP-170の微小管運動の制御が明確に示されたことで、エネルギー枯渇状態における微小管動態制御という全く新しいストレス応答機序を提案する。

第10回

講師

京都産業大学 総合生命科学部生命システム学科 浜 千尋 先生

演題

ショウジョウバエ嗅覚神経回路の形成機構

要旨

 神経系の主な構成単位は神経細胞である。しかし、神経回路の成立機構を考える時には、個々の神経細胞の分化機構を知るだけでなく、回路をシステムとして捉え、そのシステム全体の形成機構を制御する遺伝プログラムを明らかにしていく必要がある。われわれは、この問題にアプローチするために、ショウジョウバエの嗅覚系を実験材料に選び、嗅覚神経細胞の中枢への投射が異常を示す変異の解析を行ってきた。その結果、Notchシグナルが個々の細胞の分化を制御するだけでなく、全体的な軸索投射経路の選択およびシナプス標的の領域化を通して嗅覚地図の形成調節を行っていることが明らかとなった。

 また、この4月から取り組み始めたプロジェクトとして、嗅覚系を用いた新たな変異の解析とシナプス分化機構の解析について紹介した。

 
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