総合生命科学部 第5回バイオフォーラム開催報告
平成22年10月13日(水)に本学15号館15102セミナー室にて、第5回バイオフォーラムを開催しました。バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、例年開催しております。なお、本年は今後5回程の開催を予定しています。
秋学期最初の開催となった今回の講演は、講師として、(独)理化学研究所バイオリソースセンター マウス表現型解析開発チームより若菜茂晴先生をお招きし、講演をおこなっていただきました(要旨は下記参照)。講演終了後には盛んな質疑応答が交わされ、盛況のうちに閉演することができました。
なお、10月27日(水)には第6回バイオフォーラムを開催する予定です。こちらの方もふるってご参加いただければ幸いです。
講演要旨
演題:「マウス表現型解析標準化と日本マウスクリニック」
Standardization of mouse phenotyping platform and the Japan Mouse Clinic
世界規模の大規模KOマウス作製プロジェクト(KOMP, NorCOMM, EuCOMM)によりマウスの変異体リソース数が飛躍的に増加し、それに続くマウス表現型解析プロジェクトが進行しつつある。しかし表現型に関する情報量が加速的に増加し、これまでの表現型記載の方法では情報の統合が困難となってOmic研究、変異体リソースの検索、ヒトをはじめ異なる生物種の表現型への対応等の面で様々な問題が生じてきた。このような問題に対して研究機関を超えた共通基盤構築の動きが進行し、そのひとつがマウス表現型解析基盤の大規模化、および標準化である。特にEUでは、2006年までのEumorphia(マウス網羅的表現型解析基盤開発プロジェクト)の成果により、マウス飼育方法を含めた網羅的表現型解析SOP (標準作業手順書)の初期バージョンが公開され、さらにこれを基盤としてEuCOMMで作製されたマウスを対象に大規模表現型解析プロジェクトEUMODIC - European Mouse Disease Clinicが進行している。また、表現型解析における国際連携を促進するため,MRC(英)、Helmholtz Zentrum München (独)
ICS(仏)、The Wellcome Trust Sanger Centre(英)、Jackson研(米)、TCP(加)そして理研BRCなどが加わってIMPC (International Mouse Phenotyping Consortium)が発足し、表現型解析アッセイの標準化、SOP、情報フォーマットの標準化、マウス表現型データの統合等について議論されている。我が国では、理研GSC ENUマウスミュータジェネシスプロジェクトの成果を受けて、バイオリソースセンターにて「日本マウスクリニック」がスタートし、前述のIMPCに参加しつつ、実験プロトコルの整備、正確なデータ記述法と統計解析システムの開発等より広範囲で詳細なマウス表現型解析システムを構築し、ユーザーが作製した突然変異マウス系統の解析より、各種ヒト疾患モデルとしてのアノテーション、さらに、セマンティックWeb技術に基づくマウス表現型情報を扱うための技術基盤開発などを行っている。
本フォーラムでは日本マウスクリニックのシステムの紹介と、マウス表現型解基盤の国際連携の潮流について概説し、マウスユーザーへの便宜について解説した。