総合生命科学部 第3回バイオフォーラム開催報告
平成22年7月15日(木)に本学15号館15102セミナー室にて第3回バイオフォーラムを開催しました。バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、今年は年10回程度の開催を予定しています。
第3回目の講師は、岐阜大学・応用生物科学部・獣医薬理学分野の教授である小森成一先生をお招きし、「ムスカリン性アセチルコリン受容体の消化管運動調節〜ノックアウトマウスを武器とした追究〜」のタイトルで講演(*講演要旨は下記参照)をしていただきました。講演終了後には積極的な質疑応答がなされ、充実した講演会となりました。
講演要旨
ムスカリン受容体は、アセチルコリン(ACh)を認識・受容する膜機能分子として中枢および末梢組織に広く分布しており、M1〜M5の5種類のサブタイプがある。このうち、消化管運動の直接の担い手である平滑筋細胞には、M2とM3のムスカリン受容体が存在しており、コリン作動性神経による収縮調節に関与している。これまで、各サブタイプの役割・機能については、これらに選択的に作用する薬物を用いて解析が行われてきた。しかし、現在のところ、これらに完全な特異性を示す薬物は存在しない。そこで、M2またはM3サブタイプをノックアウト(KO)したマウスを新たな武器として導入し、腸管を対象として、収縮反応をはじめ様々なムスカリン作動性反応におけるM2とM3の機能的役割を比較解析した。その結果、コリン作動性神経の刺激による収縮発現には、M3のみならずM2サブタイプも有意に関与しており、それぞれの収縮誘発メカニズムは異なっていることが明らかとなった。また、腸管の蠕動運動の発生おいて、伸展刺激による蠕動反射の誘起にはM2が重要な役割を担っており、一方、M3は蠕動運動の周期性の維持に重要であることが明らかとなった。これらの結果は、従来の薬物解析によって提唱されてきた「コリン作動性神経による腸管平滑筋収縮の調節にはもっぱらM3が重要である」という仮説に修正を求めるものである。