総合生命科学部 第2回バイオフォーラム開催報告
平成22年7月5日(月)に本学15号館15102セミナー室にて第2回バイオフォーラムを開催しました。バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、今年は年10回程度の開催を予定しています。
第2回目の講演の講師は、本学総合生命科学部の学部長である永田 和宏教授が、「細胞内タンパク質品質管理機構」と題して、講演を行いました(要旨は下記参照)。セミナー室は参加者で満員となり、立席のままで最後まで講演を聴かれた方もおいででした。講演終了後も積極的な質問、意見が取り交わされ、大盛況のなかで第2回バイオフォーラムを終了することができました。
講演要旨
細胞は遺伝情報に従ってアミノ酸のつながったポリペプチドを合成するが、ポリペプチドは正しくフォールディングされて初めて機能を発揮する。一方、正しく作られたタンパク質も細胞にかかる種々のストレスによって変性し、さらに凝集体を作る危険性にさらされている。細胞はこのようなタンパク質変性の危機に対処するため、細胞内品質管理機構を備えている。特に小胞体はタンパク質合成の主たるオルガネラであり、原理の異なるいくつかの品質管理戦略を備えている。
具体的には、変性タンパク質が作られる状況では、まず新たなタンパク質合成を一時的にストップし、次に変性タンパク質を再生させるために分子シャペロンを誘導して再生を図る。再生できない変性タンパク質は分解へまわす。以上の品質管理機構のうち、永田研究室では主として小胞体関連分解と呼ばれる分解の分子機構に関する研究を行っている。分解すべきタンパク質を見分けて分解系へ回す新規タンパク質EDEMの発見、ポリペプチド上のジスルフィド結合を還元開裂して一本のポリペプチドにし、小胞体からサイトゾルへ輸送可能な状態にする新規還元酵素ERdj5の発見などは特筆される成果である。これらの機構を中心に、さらに小胞体における酸化還元ネットワーク解析の最新の成果を報告した。
ERAD模式図