「情報技術」と「安全運転」をむすぶ。

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  • コンピュータ理工学部
    秋山 豊和准教授

【むすぶ人】コンピュータ理工学部 秋山 豊和 准教授

IoTによるバス安全運転支援システムの開発×みなと観光バス株式会社

京都産業大学とみなと観光バス株式会社、株式会社電通国際情報サービス、大阪電気通信大学、京都大学、株式会社社会システム総合研究所が共同し、IoTによるバス安全運転支援システムを開発。2016年12月から2017年1月にかけて、営業稼動する30台の路線バスに本システムを適用する実証実験を行いました。この取り組みは総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)の委託事業として「走行車両からのセンサデータを収集・処理するための階層化クラウドとその応用に関する研究開発」の取り組みの一環として始まったものです。

今回の取り組みはどのようなきっかけで始まったのですか?

秋山先生:現在進行中のスマートシティプロジェクトFESTIVAL(NICT委託研究)で、株式会社社会システム総合研究所の西田さんからご紹介いただいたのがきっかけです。今回の取り組みもそうですが、IoTのアプリケーションをつくるためには、実際にモノから情報・データを得ることが必要になります。その技術をすでにお持ちだったみなと観光バスさんとの出会いは大変心強いと感じていました。

亀谷さん:私たちは以前から、デジタルタコグラフィをバスに搭載し車両の情報をデジタル化してネットワーク経由で共有できるシステムを構築していたので、情報はいくらでも提供できました。ただ、それを解析することが時間や人材的にも難しかったので、秋山先生の力をお借りできるのならばと共同開発に踏み切りました。

秋山先生:大学としても、これまで研究開発してきた技術をいかに応用していくかが問われる時代なので、実用化に向けて実証フィールドを探していたんです。そういう意味ではお互いWin-Winの関係になれた、つまりめざす方向性が一致したことで大学と民間バス会社のむすびつきが実現しました。

情報を抽出するノウハウのあるバス会社と、それを分析する技術のある大学がむすびついたということですね。それでは、このシステムを開発しようと思った背景は?

亀谷さん:会社として、運転手の健康管理を非常に重要視しています。近年特に注目されていますが、人が運転する以上、予期せぬ健康状態の悪化やトラブルが起こる可能性はゼロではない。そこで今回のシステム開発によって、事故を未然に防ぎたいと考えました。これまでにブレーキを踏んだタイミングなどの車両情報を抽出するといった対策は開始していましたが、その分析までは取り組めていませんでした。また、車両以外にも、人の力では管理しきれない微細な体調の変化を、IoTを利用して検知できればと考えていましたが、生体センサの導入までは至っていませんでした。接触型のセンサーは運転手の負担が大きいなど課題もあり、より良いシステムを開発するのが課題の1つになっていました。

秋山先生:そういう状況を打破するために、生体情報の収集は座席の背面につけた非接触のセンサーで行い、収集した情報をクラウドシステムを使って即時的に処理し反映できるような仕組みを構築しました。情報から特徴を見つけ出すにはどうするか、バスからデータを送るクラウドサービスがうまく機能するか、危険を察知したときにいかにリアルタイムで警告を出すかなど試行錯誤を繰り返しました。今はそれらのデータをどう可視化するのかという問題について重点的に研究しています。交通情報と運転の様子、それに運転手の生体情報を可視化して重ね合わせることで、自分の運転のどこが危険なのか、その原因は何なのかが見て分かります。さらに日時やルートなどの条件を重ねて比較することで、あらゆる状況下での運転の変化とその原因を探ることができるんです。また、生体情報については京都大学大学院医学研究科の先生方にご協力いただいて、眠気や緊張などの異常値の分析を可能にしました。運転が終わった後に、自分の運転と熟練運転手の運転を比較・確認し、視覚的に把握することで若い世代の運転手を育てていくことも可能だと思います。

これまで運用してきて、手ごたえはありましたか?

亀谷さん:実際に手ごたえは感じています。運転技術のフィードバックが可能なことはもちろん、データを取っているという緊張感から運転手の安全意識も高まっていると思います。また、バスの運行状況は一般の方にも公開しているので、渋滞などで遅れた場合も納得して待っていただけています。今バスがどこにいるのか、周りの状況と合わせて「見て分かる」ことが、お客様のご理解・安心につながり、苦情も減りました。

秋山先生:そういう意味では、周辺の情報をストックしてデータ化するというのは、安全運転支援だけでなくさまざまなサービスに応用できるのではと思います。交通状況と店舗情報を重ね合わせて地域と連携するなど、いろんな活用法が考えられますね。

松本社長:この取り組みは外部からの注目も集まっていて、非常に高評価をいただいています。国土交通省の各運輸局の方が視察に来られて、「この技術を使って広範囲での交通情報のデータ化を進め、各バス会社で情報共有し安全なバス運行が可能な世の中にしていきたい」と実用化に向けてかなり前向きな意見をいただきました。全国的な運用に向けてはまだまだこれからですが、期待が高まっているのは確かですね。

秋山 豊和 准教授
みなと観光バス株式会社 亀谷さん
みなと観光バス株式会社 松本社長

今後この取り組みをどう進めていきたいですか?

亀谷さん:現状のデータに、さらに「道路の荒れ」の情報も重ねて、さらにデータを精緻化していきたいです。アスファルトは科学的には液体なので、日々変化するものなんですよ。そういった情報まで検知して、安全運転を支える要素の一つにしていきたいですね。

秋山先生:今回は検証期間も限られていたので、手作業で情報を入力してデータベースを作った部分もあります。より精密な結果を得るにはさまざまな情報をインプットしていく必要があるので、このデータベースを作るという作業の効率を上げ広域な分析を可能にし、実用化につなげていきたいですね。

松本社長:この技術を応用して、近年注目されている自動運転技術などにも生かしていければと思っています。自動運転は、マニュアル通りに運転するだけでは安全ではない。ここは人通りが多いからスピード落とす、というような人が運転するからこそできる判断や気付ける情報をシステムに組み込むことで、自動運転の精度もアップするのではと思っています。

最後に、京都産業大学の学生に期待すること、求めることを教えてください。

松本社長:学生さんたちに、もっともっと興味を持っていろんなことに挑戦していってもらいたいと思います。秋山先生の解析力は日本でもトップクラスだと思いますし、社会で求められている技術力を、他でもない京都産業大学が持っているのですから、このチャンスを生かしていってほしいです。最先端の技術を創り、運用していく中で一緒に挑戦してくれる学生が増えると嬉しいですね。

亀谷さん:自分で考えて行動を起こせる学生になってほしいと思います。京都産業大学の学生たちはみんな基礎・基本がしっかりできているので、あとはひらめきと行動力、そして冒険心を持ってほしいですね。

秋山先生:現在、学生たちもこの取り組みに参加し、分析・解析の方法を学んでもらっています。自分が情報系を専攻しているからといって将来の可能性を限定せず、今回のバス会社とのコラボレーションのように、社会のあらゆるところに活躍できる場があるのだということを知ってもらいたいですね。世の中にあるさまざまな課題を発見し、大学で培った知識と技術を社会とむすびつけ、新たな価値をうみだし、活躍できる人になってほしいと思います。

※掲載内容は取材当時のものです。

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